びあかれオープニングイベントとして,北近畿のブルワリーをめぐるツアー「北近畿ブルワリーツアー2023 ~旨いビールと,美味い北近畿を巡ろう~」を開催しました!
どんなツアーか?
学生代表およびビールに詳しい有識者のみなさまを招待しまして,北近畿のブルワリーの良さや新しさを体験していただくとともに,その様子を取材して,当「びあかれ」のコンテンツとして展開することを目的として,2023年12月16日に開催されたものです.
ツアーには学生5名を含む10名の参加者にご参加いただき,以下の4箇所のブルワリーに加え,ご厚意により与謝野ホップ圃場の見学を含めた1泊2日のツアーとなりました.
なお以降ではブルワリー各社様の敬称を略させていただいております.
1日目(12/16)
Primary Barrels
12月16日正午,福知山駅に集合したツアー一行は,バスにてまずは福知山市内にある新進のブルワリー,Primary Barrelsに向けて出発しました.
到着したのは…小学校!?
Primary Barrelsは,廃校となった小学校を利用して新しい農業を展開する企業内チームFIELDS THE BASEが運営するブルワリーです.まもなく始動ということで,真新しい醸造所を見学させてもらいました.
醸造所では,麦芽を煮出しているところでした.Primary Barrelsでは,麦芽もホップもなにもかも現地のローカルな生産品にこだわる生産を試みています.ですので,そもそも「この麦芽からどれぐらいの麦芽糖が算出されるのか?」から計るという手探りのスタートが必要とか.まさに研究の瞬間です.
構内はところどころに小学校の様子を残したままですが,すっかり洒落た雰囲気に改装されている場所も多くありました.また,地元の人に楽しんでもらいたいと,すでにボトルショップとビアバーを構内に展開しています.早速一杯…
運動場はイチゴのビニールハウスが広く展開していて,ちょうど旬.イチゴのビールの開発も検討されているとか.どんなものが出来上がるか,これからに期待です!
丹後王国ブルワリー
バスは一路北へ.天橋立のすぐそばの京丹後にある,クラフトビール好きなら誰もが知っている著名なブルワリーのひとつ,丹後王国ブルワリーへ向かいます.
お出迎え頂き,まずは社長(!)よりご挨拶とご講演をいただきました.もともと地ビールブーム時代にできたブルワリーを引き取って始まった丹後王国のビール生産.規模は小さいながら,全国で戦えるものを展開すべく,展開するビールの種類を数種類に絞って生産量と品質を維持しつつ,積極的にコンペなどにも出展してその出来をアピールしています.
この丹後王国はビールだけではなくて,ソーセージや野菜など,様々な北近畿・丹後地域の産品を手掛けています.ですので,ブルワリーのある「道の駅 丹後王国」では,広い道の駅エリアに様々な店舗や工場,ホテルなどが立ち並び,丹後地域の観光がぎゅっと詰まったエリアになっています.
醸造釜は,他の新進のブルワリーと違い,前の事業者から引き継いだ古い窯をそのまま利用.規模があまり大きくないので生産を回転させるのが大変という話でしたが,他とは一味違う醸造スタイルを続けています.それでもさすがに人力では大変ということで,新品の機械が並んでいました.
与謝野ホップ圃場
バスは南下して,北近畿の真ん中にあるホップの圃場(生産地)の見学に進みます.
あと数日で冬至という時期がわざわいして,もう外は真っ暗…にもかかわらず,ホップ圃場のオーナーでもあり,日本ビアジャーナリスト協会の会長でもある藤原様が,なんと小雨降る中我々のために外でお待ちいただいておりました.ありがとうございます!
…それにしても…真っ暗なうえに何も見えませんね….ホップの収穫時期は夏なので,今はすでにつる草も切り落とされて,ただ畝だけが残されています.
ホップとは,ビール特有の苦さのもととなる香草の一種.つる草として成長するのですが,放っておくとあっという間に根もつる草も野放図な成長をするのだとか.品質の高いホップを育てるために,すでにつる草を刈り終わったこの時期でも,根の管理が必要になるのだとか.この時期にしか見られないということで,ホップの株の根を見せていただきましたが,なるほどこんがらがっていますね.
ここではカスケードを代表として7品種ほどを,フレッシュホップとして(ペレット状に乾燥させるのではなく)提供しています.京都内外の様々なブルワリーに卸していて,フレッシュホップIPAに代表される緑の薫り高いビールの生産を支えています.
藤原様,ありがとうございました!
TANGOYA BREWERY
与謝野ホップ圃場から15分ほど,今日の最終目的地であるTANGOYA BREWERYに到着.
町おこしや地方移住などを支援する法人とともに活動するTANGOYA BREWERYは,与謝野の新しい特産品であるホップを最大限生かし,京都・与謝野ブランドを国内外に展開することを目指して設立されました.こちらも間もなく醸造開始です.
真新しいブルワリーのタンクの前で,地域の活力をいかに魅力や産品に結び付けるかを熱く語っていただきました.強力な助っ人も地域内外から合流し,これからの展開に期待を膨らませているのだとか.助っ人といえば,ご講演いただいている間に,先の藤原さんも併設のブリューパブにビールを飲みに来られていたとか.
併設のブリューパブにて本日のメインイベントである懇親会を開催.ご厚意により,本日および明日見学するブルワリーに加えて,北近畿近隣のブルワリーのビールを片っ端からご準備いただいた,北近畿タップテイクオーバーでした! さらには北近畿の食ということで,丹後王国で仕入れたソーセージなども展開.
同日開催されていた移住イベントの参加者の皆様に加え,現地の方も混ざってお喋りに花を咲かせる一行,まさに地域一丸となって活動しているまっただ中で,北近畿のビールを堪能した一日でした.
2日目(12/17)
CRAFT BANK
朝,外を見ると小雪がちらついていました.さすが北近畿は寒い….一行は最後の目的地である,福知山のブルワリーCRAFT BANKに移動します.
CRAFT BANKは2年前にオープンしたブルワリーで,旧銀行(厳密には信用金庫だそうです)の跡地に設立されたことにちなんで名前を「BANK」にしたとか.地元のスタッフと地域の仲間でまさに手作りでリノベーションした店内にはあちこちに銀行の名残を残しています.金庫室でビールが飲めるのは世界広しといえどもこの店ぐらいなのでは…?
すでに様々なビールイベントや全国のビアバーなどにビールを展開していて,まさにいまタンクにて醸造中,という工場を直接見せてもらえるというのも貴重な体験です.1キロリットルのタンクから直接注がれる,まだ炭酸ガスを封入していない,まさにリアルなビールを体験.
シェアオフィスなど,ビールを片手に様々なキックオフやスタートアップの支援の場としても活用してもらえるように,醸造所建屋機能を拡張しつつ,酵母の自力生産を含む本格的なビールの醸造を目指している,これからどんな新しいことが起きるか楽しみなブルワリーでした.
ツアーを終えて
ツアーはこれにて現地解散となりました.
既に一定のシェアを確保しているブルワリー,これから有名になるかもしれないブルワリー,まさに今始まったばかりのブルワリーなど,北近畿にはその活躍の状況や歴史の異なる様々なブルワリーが数多くあり,醸造家のみなさんの熱意,思い,また地域との関係性とその難しさを,生の声で聴くことができたツアーとなりました.
旨いビールを飲むだけなら別にこんな話はもしかしたら不要なのかもしれませんが,クラフトビールの産地にはそれぞれ様々に刻まれた思いと時間があります.また今度クラフトビールを飲むときには,その生産地や生産者に思いを馳せてみるのもよいかもしれません.その一端を垣間見られたツアーとして,とても有意義なものになったのかなと思います.
参加してくださった学生のみなさんも,ビールは好きだけど,どんな人達がどんな思いで作っているのかはもちろん知らなかったわけで,それを知ったことで,よりビールのことに興味を持ってもらえればよいなと思っています.
運営としては…このツアーは夏にやるべきだと思いました.それだけが心残りです.